冷却ファンの選定を「入っていたファンと同じサイズ」だけで決めると、夏場に温度が下がらない、騒音が大きすぎる、1年で異音が出る、といった問題が起きます。ファンは機器の熱設計の一部なので、発熱量から逆算して選ぶのが基本です。
この記事では、実際に装置メーカーからの引き合いで確認する順番に沿って、7つの手順を解説します。
手順1:必要風量を発熱量から計算する
まず筐体内部の発熱量(W)を合計します。電源ロス、CPU・パワー半導体・モーターなどの損失が主な熱源です。そこから許容できる温度上昇(外気との差)を決めれば、必要な風量が概算できます。
必要風量(m³/min) ≒ 0.05 × 発熱量(W) ÷ 許容温度上昇(℃)
たとえば発熱100W、盤内を外気+10℃までに抑えたい場合、0.05 × 100 ÷ 10 = 0.5 m³/min が最低限の風量です。これはあくまで「抵抗のない理想的な経路」での値で、実際は吸排気口・フィルター・フィンの抵抗で風量が落ちます。実効風量は定格の50〜70%程度を見込んでおくと安全です。
つまり上の例では、0.7〜1.0 m³/min クラスのファンが必要になります。
手順2:サイズと厚みを開口寸法から決める
サイズは筐体の開口寸法でほぼ決まります。ただし同じ「120mm角」でも厚みが25mm・32mm・38mmとあり、厚いほど風量・静圧が上がります。逆に薄型は風量が落ちるため、通気抵抗が大きい設計では不利です。
- 40mm角:40×7/10/15/20/28mm — 小型機器・カメラ・ルーター
- 60mm角:60×10/15/20/25mm — 通信機器・電源・医療機器
- 80mm角:80×10/15/20/25/38mm — 汎用・制御盤・計測機器
- 92mm角:92×25mm — 80mmと120mmの中間
- 120mm角:120×25/32/38mm — 電源・UPS・サーバー(最も一般的)
- 172mm角以上:172×51/225×80/280×80mm — 大型盤・通信基地局・産業機器
サイズ別の仕様はDCファン一覧、AC軸流ファン一覧で確認できます。
手順3:電圧を決める
DCファンは5V・12V・24V・48V、ACファンはAC100V/200V系が標準です。装置内にDC電源があるならDCファン、AC配線しかないならACファンかECファンが適します。
- 12V:小型機器・カメラ・3Dプリンタで最も一般的
- 24V:産業機器・制御盤・工作機械(ノイズマージンが取りやすい)
- 48V:通信機器・サーバー・大容量電源
- AC100V/200V:制御盤・大型装置(DC電源を用意しなくてよい)
- ECファン:AC配線のままDCモーターの効率を得たい場合
AC配線を変えずに消費電力を下げたい場合はECファンが選択肢になります。
手順4:静圧と通気抵抗を確認する
風量だけでは足りません。吸排気口が狭い、フィルターがある、フィンの間隔が狭い、ダクトを付ける——こうした条件では「静圧」が必要になります。軸流ファンは静圧が低めなので、抵抗の大きい設計では遠心式のブロワーファンのほうが有利です。
詳しくは風量と静圧の違いで解説しています。
手順5:騒音値を条件と照らし合わせる
カタログの騒音値(dBA)は1m離れた地点での測定値です。人が近くで使う機器(医療・店舗・オフィス)では30〜35dBA以下が目安、機械室設置なら45dBA以上でも問題ないことが多いです。
騒音は回転数の6乗〜7乗に比例して増えるため、少し回転を落とすだけで大きく下がります。PWM制御で定格の70%程度で回す設計は、騒音対策として非常に効果的です。
手順6:ベアリングと期待寿命を確認する
同じファンでもベアリングで寿命が変わります。スリーブベアリングは安価で静かですが高温・連続運転に弱く、ボールベアリングは高価ですが長寿命で高温に強い。
期待寿命(L10)は最高使用温度での値であることが多く、温度が10℃上がるごとに寿命がおよそ半分になります。実際の使用温度で読み替えて判断してください。詳細はベアリングの種類と寿命へ。
手順7:制御と信号の要否を決める
装置側からファンを制御・監視したい場合、次の信号が必要になります。
- PWM:外部から回転数を変える(4線式)。PWM制御とはを参照。
- FG:回転数をパルスで出力(監視用)
- RD:回転停止をアラームとして出力(電源・通信機器向け)
これらが不要なら2線式で十分です。コストを下げたい場合の第一候補は配線の簡素化です。
まとめ:迷ったら発熱量・開口・電圧の3点を伝える
選定で最も多い失敗は「風量は足りているのに温度が下がらない」=通気抵抗の見落としです。発熱量(W)、筐体の開口寸法、電源電圧、許容騒音の4点が決まれば、ほぼ仕様は絞れます。
製品一覧からサイズ別に探すこともできます。「この条件だとどのファンか」のご相談はお問い合わせで承ります(OEM/ODMでの特注にも対応)。








